白内障のお話

まず、白内障とは、眼の中にある“水晶体”と呼ばれるレンズが濁る病気で、霞みや眩しさを感じ、次第に視力の低下を自覚してきます。

白内障の原因としては、先天性や糖尿病、外傷など様々ありますが、最も多い原因は加齢によるものです。

60歳を越えると程度の差こそあれ、殆どの方に認められますので、眼科で白内障と診断されたからと言って、直ぐに手術などの心配をする必要はありません。

初期の白内障は、紫外線予防や点眼液や内服による進行予防で様子を見ることがありますが、若いときのように元に戻ることは無いので、ある程度の進行が認められれば手術が必要となります。

一昔前の白内障手術は、麻酔の注射が痛かったり、手術時間が長かったり、また術後の絶対安静が辛いものとされていました。そのため、現在でも白内障手術への恐怖があり、生活に不自由を感じていても我慢をしている方が、時に見受けられています。
しかし、近年の白内障手術の技術や機械の進歩はとても目覚ましく、術式は大きく変化し、より安全に、より確実な、そしてより短時間に行える手術となってきました。

白内障手術に関する進歩を3つ挙げます。

 1.麻酔方法の進歩
 より短時間で手術が行える現在、殆どが点眼麻酔のみで十分とされ、注射による苦痛はありません。

 2.機械の進歩
 手術は、顕微鏡下で拡大して行うため、0.1mm単位の細かい操作が可能となり、さらに、白内障を砕きながら吸引する超音波白内障手術装置の進歩により、より安全により短時間で確実に行うことができるようになりました。

 3.眼内レンズの進歩
 白内障摘出後は、水晶体というレンズが無くなってしまうため、代わりに眼内レンズと呼ばれる人工のレンズを眼内に挿入します。当院では、傷の大きさを出来るだけ小さくする目的で、折りたたむことができる眼内レンズを採用しています。これにより、切開創は昔に比べ1/5~1/8の大きさに縮小することが可能となりました。

現在、眼内レンズは保険適応内で使用される単焦点レンズと老眼対策のための多焦点レンズ(自費)があります。
単焦点レンズは、一番自然な見え方となっておりますが、術後に老眼が残ります。
多焦点レンズは、ハローやグレアなどの光の散乱が起こる少し不自然なレンズではありますが、遠くや近くにピントが合い易くなります。

これら3つの進歩により、手術後の安静も30分程度と、殆ど不自由を強いることは無くなりました。よって、手術の時期としては、ご本人が生活に不自由さを感じる時期が良いと考えられ、完全に見えなくなるまで待つ必要はありません。むしろ、進行して硬くなった白内障では、超音波白内障手術装置でも砕けない場合があり、かえって手術が難しくなってしまいますので、ある程度の進行で白内障手術をすることをお勧めしています。

最後に白内障手術の利点と欠点を、簡単に挙げておきます。

<利点>
・眼の中の濁りがなくなるので、術前よりも明るくなり見やすくなります。
・強い近視や遠視がある場合には、屈折を矯正することで、裸眼視力の向上や眼鏡装用時のレンズ度数が軽く済むようになります。
・眼底検査において眼の病気の早期発見が可能になります。

<欠点>
・手術なので、危険性も100%無く、絶対に安全と言い切ることは出来ません。よって、思わぬ術中-術後合併症が起こる可能性があり、その都度適切に対処していかなければなりません。
・白内障の他に角膜や網膜の病気がある場合は、必ずしも視力が改善するとは限りません。

2016年06月15日